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中野 エステサロンを検討する


 カーチスーコンドーのキャビンで、乗客に煙草を勧める写真が残っている。
煙草は五〇本の缶入りチェスターフィールドだ。
ボーイング247のキャビンで、スチュワーデスが女性客にラッキー・ストライクを勧めている写真も残っている。
このサービスはかなり長く続いていたようで、筆者も一九七〇年代にルフトハンザのファーストクラスで、煙草を勧められた記憶がある。
 禁煙大国アメリカ(でも、なぜかシガーバーが人気)のアメリカで、最初に全便・全席禁煙運航を行ったのは、ミューズーエア(一九八一年設立、後にブラニフ航空が買収)である。
ヘビースモーカーである筆者は、禁煙体験をゲーム感覚として味わうために早速搭乗してみた。
 ロサンゼルス~ヒューストン、マクダネルダグラス(当時)MD-80で約三時間のフライトだった。
シートはすべて本革張り、床にはふかふかの絨毯、空飛ぶ重役室という感じでナルホドこれでは煙草の焼け焦げなんか作られちやたまらないと納得した。
離陸から一時間ほどして、禁断症状が出はじめたころ、スチュワーデスが小さなパッケージをくれた。
禁煙マークが付いていて、スモーカーズーサバイバルーキットと書いてある。
中には、チューインガムとキャンディが入っていた。
かつて「空の喫煙」はフアツショナブルだったもともと煙草会社とエアラインの縁は深かった。
チェスターフィールドの広告ポスター(1952年) 空港の免税店での人気商品は、ずっと煙草がナンバーワンだったし、インフライトーマガジン(機内誌)には、必ず煙草の広告があったものだ。
一時期エアラインのノベルティにも灰皿やライター、マッチが多かった。
筆者自身、パンナムから卓上ライターをもらったことがあるし、ルフトハンザの灰皿は今も仕事場のデスクの上にある。
また煙草会社は、自社の広告・宣伝に空の旅やパイロット、スチュワーデスのイメージを、ハリウッドースターと同じくらい効果的なものとして好んで起用した。
 壬几に古いポスターが二枚ある。
そのうち一枚は、一九五二年のチェスターフィールドの広告で、ハリウッドースターのデイルーロバートソンがストラトクルーザーのシートに座り、スチュワーデスから煙草を受けとっている写真が使われている(91ページ写真)。
コピーには「アメリカじゅうで、スモーカーはチェスターフィールドに替えている」「チェスターフィールドは、ユナイテッドのホノルル行きストラトクルーザーの全便で、独占的に提供されています」などとあり、Y航空副社長の署名入りだ。
 もう一枚は、一九六〇年代のピーター・ストイフェサントの広告である。
ピーター・ストイフェサントは、ニューヨークがまだニュー・ネザーランドといっていたころの、最後のオランダ提督の名前を冠した煙草だ。
当時免税店で最も売れた銘柄だという。
ポスターには、数機のカラフルなジェットのイラストと、ボックス、ソフト両タイプのピーター・ストイフェサントの写真が使われており、コピーには「喫煙への国際的パスポート」とある。
 これらのポスターを眺めていると、煙草も空の旅もハリウッドも、ファッショナブルだったころが偲ばれる。
確かに、政府が健康についての警告を発する以前、嫌煙権などという言葉が市民権を得る以前、高度一万メートルでの喫煙はファッショナブルだったのだ。
 煙草と空の旅の歴史は長い。
でも、それはすでに昔の話。
ヨーロッパ線に乗るときや、スペースシャトルの打ち上げでオーランドまで行くときなどは、途中の乗り換え空港も全館禁煙のためさすがに辛いが、筆者も今はゲーム感覚で禁煙フライトに耐えている。
そういう社会が選択されたのだから、仕方がないと思っている。
 しかし、シガレットケース、ライター、マッチ、灰皿、煙草盆、キセルにパイプ、シガーカッターなど、喫煙にまつわる道具は多い。
工芸品も少なくない。
禁煙社会は文明の選択だろうが、喫煙は文化だと思うのだけれど。
トイレもまた進化する初期は「バケツ溜め込み」式乗客にとってキャビンで唯一のプライベート空間、それは化粧室だ。
トイレットと化粧室の機能を備えており、専門的にはラバトリー・モジュールと呼ぶ。
 ラバトリーには、トイレット機能の便器、便座の他に、鏡、温水と冷水が出る蛇口付きの洗面台、化粧品、石鹸、ティッシュペーパー、ペーパータオル、シェーバー用電源などが装備されている。
女性用生理用品も必ず備えてある。
最近のラバトリー・モジュールには、折りたたみ式のおむつ交換台も装備されており、母親たちに喜ばれている。
 水洗式のトイレットーシステムは現在では常識だが、実はこれはジェット旅客機になってからの話だ。
それまではどうしていたかというと、前述のように、ごく初期は垂れ流しで、その後、戦前からヴィッカースーヴァイカウントの頃までは、バケツ溜め込み式たった。
この方式だと、着陸後、バケツを外して汚物を捨てる必要があり、たとえば一九五〇年代のヴァイカウント機(四三人乗り)ともなると、処理だけで大変だったろうと思う。
 レシプロ旅客機の最後のころ(DCI6B、DC-7、コンステレーション)になると、旅客数が増えたことからタンクは機内に固定されるようになった。
おかげて、空港に着くやバキュームカーがやって来て、内容物だけを抜き取る方式に変わり、スチュワーデスは汚物処理から解放されたのである。
日本製ターボプロップ旅客機、六〇人乗りのN機製造YSΛ11も、タンク内蔵のバキュームカー方式だった。
キャビンの差圧を利用して強制的に機外に抜いたから、臭気はしなかったという。
航空機の設計者で、現在は航空ライターとして健筆をふるっておられる鳥養鶴雄さんの言葉を借りると、「無臭汲み取り式」といったところ。
 余談になるが、鳥養さんの著書で知ったところによると、日本でYs-11の設計が検討され始めたごく初期のころ、せいぜい二時間くらいのフライトだからトイレは要らない、乗客には我慢してもらえばいい、などと真面目に議論していたのだという。
鳥養さんは、 「(女は乗せない)戦闘機しか設計したことのない人たちのカルチャーだったのだろう」 と書いている。
 水洗式になったのは、B707やDc-8などのジェット時代になってからのこと。
旅客機の水洗トイレは、下水道に流すわけにはいかないので循環式になっている。
つまり汚物タンクに溜まった汚水を濾過して、水洗用の水に再生、再使用する方式だ。
中に、殺菌、脱臭、着色の働きをする処理剤を入れているので、再生された水洗用の水には色(普通は青色だが、着色されていないものもある)が付いている。
循環式のMットはタンクが小型で済むことだが、濾過用のフィルターに異物や紙が詰まると大変だ。
くれぐれも便器には変なものを捨てないように。
捨てて流せるのは、トイレットペーパーと便座の紙シートカバーだけである。
95ちなみに、手洗いの水や飲料水は、循環式ではなく、別系統で供給されている。
 最近では、B767から装備がはじまったバキューム式が普及している。
これは、少量の水で水洗し、ボールに溜まったと同時に、キャビンの差圧と、別に設けられた真空ポンプを利用して、汚物と水を一気にタンクに吸い込む方式だ。
 クラス別ラバトリーの数 キャビンのラバトリー、つまりトイレの数が問題になったのは、三〇〇人以上、五〇〇人も乗れるワイドボディージェット旅客機が誕生するときだった。



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